山口蓬春(1893-1971)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に学びました。古典による伝統的日本画を探求する一方で、西洋画の技法を取り入れる等、従来にない数々の試みを実践し、独自の新日本画の世界を築きました。
日展を中心に活躍し、日本画の進展に大いに貢献した蓬春は、昭和40年には文化勲章を受章、皇居新宮殿杉戸絵《楓》に代表される数々の業績を残しています。
昭和46年5月31日、日本画家山口蓬春は戦後を過ごしたこの葉山の地で77年の生涯を閉じました。
平成2年、山口家より土地、建物及び所蔵作品の寄贈を受けた財団法人JR東海生涯学習財団(現・公益財団法人JR東海生涯学習財団)では、その偉業を永く後世に伝えていくことを目的として、平成3年10月15日、山口蓬春記念館を開館致しました。
当記念館では、蓬春の本画をはじめ、研鑽の偲ばれる素描、模写などを公開しております。その他にも、常に古今東西の美術に対する理解、研究を怠ることのなかった蓬春が、長年にわたり収集した美術品の数々も、随時展示替えを行いながらあわせてご覧頂いております。
また、葉山に転居して以来、数々の名作を生みだした画室は、蓬春とは東京美術学校(現・東京藝術大学)で同窓であった建築家・吉田五十八氏による設計です。当時のままの状態で保存し、四季折々の草木が楽しめる庭とともに公開しております。
来館された方々には、蓬春の生前の創作活動を偲びながら、海と山に囲まれた葉山の豊かな自然を満喫していただけるものと思います。