山口蓬春生誕120周年記念展Ⅲ
山口蓬春の日本画と写生
―造形の基礎を探る―
2014年10月24日(金)~12月23日(火・祝)
この展覧会は終了しました。
日本画の制作では、現場で直接対象物を見ながら本制作を行うことは少なく、写生などをもとに下図を作成してから本制作を行うという行程がみられます。この写生について日本画家・山口蓬春(1893-1971)は、「素材が定まると、それを造形的に基礎づけるために、写生が必要になってくるのであるが、日本画に於ける写生の建前と言うものは、つまり、一つのタブロウ(画面)を作るためのトレイニングのようなものである。」と著書『新日本画の技法』(美術出版社、昭和26年)の中で述べています。
蓬春は東京美術学校西洋画科に入学するも日本画科に転科し、以後、戦前から戦後へと時代が大きく移り変わるなかで新しい日本画の創造をめざし、日本画壇をリードしてきました。現在、山口蓬春記念館には、蓬春が遺した研鑽の偲ばれる写生も多く含まれ、彼が写生という"トレイニング"を日々行っていたことが窺われます。この造形の基礎とも言える写生について蓬春は、「観たまま、感じたまま、知ったままを一つの写生の中に包括する」と述べています。つまり、「客観的な視覚作用を通しての描写」と「対象物に対する自己感動の併写」、さらに「美と言うものの要素」を写生の経験を通じて知っていることが重要であると説いています。
本展覧会では、蓬春の画業初期から晩年に至る日本画や写生などを取り上げ、彼が目指した新日本画の軌跡を写生という視点からご覧頂きます。