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hoshun_summer2010_flyer.jpg 夏季展
山口蓬春・素描の世界 --描かれた四季の花々--
開催期間:2010年6月11日(金)〜8月1日(日)
この展覧会は終了しました。

山口蓬春記念館では、山口蓬春(1893−1971)が描きとめた多数の素描類を所蔵していますが、そこには様々な花が描かれています。蓬春は自身の絵のモティーフとするために多くの草花を庭園に植え、遺された素描からは蓬春の花を愛でる気持ちを窺い知ることができます。
素描について蓬春は、「観たまま、感じたまま、知ったままを、一つの写生の中に包括することが出来るようになれば、その写生は立派な写生であり、このような写生に依って初めて立派なタブロウ(*)が創作されることになるのである。」(山口蓬春『新日本画の技法』昭和26年)と述べています。この「観たまま、感じたまま、知ったまま」とは、ものを視覚でとらえた観たままを描き出すだけでなく、そこに自己感動があらわれ、またそのものが最も美しく見える状態を知るということであり、このような素描が出来るようなるまでには、相当に永い訓練が必要になると述べています。
また「日本画に於ける写生は、一つの独立した画面を制作するための準備運動であって、昨今ジャーナリズムが雑誌や新聞の上に、素描と称して頻りに取り上げて居るような人に見せるのが目的のものではない。ジャーナリズムなどの要請に基いて、特に人に見せる目的で作った写生には、時に、素描体でタブロウに近いものや、或は、素描化された一種気取ったスタイルを持つものも出来るが、日本画に於ける写生の原則は、飽く迄も自分のため、即ち、自分の創作の基礎を作るためである。」 (同上)としていることから、素描とは作家がものを観察し造形的に基礎づける純粋な段階であり、素描を見るということは、その作家の芸術創造の舞台裏を垣間見ることなのかもしれません。
本展では、このような創作の原点とも言える素描に焦点をあてて、蓬春の目を透して描かれた四季の花々の世界を展観いたします。

* タブロー tableau(仏) 完成された絵画作品。


hoshun_spring2010_flyer.jpg
春季特別展
想像と装飾の美―デザイナー・山口蓬春の視点―
開催期間:2010年4月3日~6月6日
この展覧会は終了しました。

「油絵と日本画はそもそも絵の具がちがう。その絵の具を使って日本画は装飾性を発達させてきたし洋画は写実を追究してきた。(中略)日本画の顔料が持つ特殊性これを生かさないと-。」
(『富山新聞夕刊』昭和40年[1965]6月14日より)

山口蓬春(1893-1971)は、東京美術学校西洋画科に入学するも日本画科に転科し、以後、戦前から戦後へと時代が激しく移り変わるなかで「新日本画」の創造をめざし邁進し続けました。伝統的な技法を基盤としつつも広く内外の芸術を吸収し、「蓬春モダニズム」と形容される独自の世界を創り出していきます。そのなかで蓬春が「新日本画」の指針のひとつとして見出したのは「装飾性」でした。
一方で、画壇のなかで早くから頭角を現しながらも人間味に溢れた蓬春のもとには分野を超えて多彩な文化人が集まり、彼らからの要請により様々な美術活動をも展開していきます。本の装丁をはじめ、歌舞伎の美術監修や緞帳原画、着物、切手の図案などの制作では、内容に適したデザインを凝らし華やかな演出を施していきました。
それらのデザインにかかわる仕事と日本画制作とは、表現の場は異なりますが、ともに想像のなかから美を抽出し、目的に応じて発展させた行為ともいえ、それゆえにその芸術の共通するエッセンスを多分に含んだ表現であるとも考えられるのです。
本展では、蓬春のデザインにおける仕事に注目し、その視点を通じて蓬春の芸術を捉え直し、蓬春が目指した「新日本画」とその「装飾性」の意味を探ろうとするものです。
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