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春季特別展
山口蓬春と多彩な芸能の世界 ―昭和美術のアートディレクター
開催期間:2006年1月7日~3月26日
この展覧会は終了しました。

戦後、新日本画の進展の中軸となり、日展幹部として活躍していた蓬春は、一流の芸能人たちから美術面での支援を要請されていました。
東京美術学校で松岡映丘のもとに学び、卒業後も新興大和絵会に在籍して有職故実の研究をよくした蓬春は、歌舞伎の世界では舞台の時代風俗や装束、調度などの監修を委嘱されたのです。中村歌右衛門(六世)とはそれらの仕事を通じて親しい交流があったことが、それぞれの遺品からも窺えます。
一方、昭和20年代後半より日本全国には多くの劇場が建てられました。大型劇場では舞台に緞帳が飾られるようになり、それらの原画は蓬春を始めとする当世一流の画家たちによって制作されました。
原画として残っている《白蓮木蓮》(新橋演舞場緞帳原画)、《杜》(国立教育会館緞帳原画)をはじめ、蓬春による現存するすべての下図をご覧いただき、劇場の華やかな雰囲気や舞台空間が生み出すドラマを感じていただければ幸いです。


初冬特別展
蓬春のエキゾティスムとロマンティスム
開催期間:2005年10月22日~12月23日
この展覧会は終了しました。

初め洋画を学びながらも日本画家としての道を選んだ山口蓬春(1893-1971)は、戦前から戦後にかけてのあゆみのなかで「新日本画の創造」をめざして模索を続けました。
蓬春は、遂にヨーロッパを訪れることはありませんでしたが、たびたび中国、朝鮮、台湾を訪れ、その時の取材をもとに作品を制作しました。しかしそれらの作品は、単に日本にはない異国の珍しい風景を描くのではなく、丹念な取材によって収集された情報のなかから、「今」の感覚に最も相応しいエキスを抽出し、リアルな描写力によって生み出された全く新しい情景といえます。実在しない情景でも何の不自然もなくそこに現出させる、そこに蓬春芸術根底にある一種の幻想美を見出すことができるのです。また、昭和20年代に描かれたシュールレアリスム的な作品には、フランス近代絵画を思わせるものがあり、これまでの日本画にはない表現形式による新しいフォルムと色彩構成によって幻想的な空間を創りだしています。しかし、蓬春の幻想は、感傷的なものではなく、常にヴァルールの追求と知的な画面処理という新しい感覚で日本画を捉え直した時に現われる造形上の幻想美であるといえます。
本展では、明るくスマートと評される蓬春芸術の根底にある一種の幻想美を「エキゾティスム」と「ロマンティスム」という新たな視点で読み解きます。
秋季展
山口蓬春と茶の湯〜蓬春夫妻が愉しんだ茶道具たち〜
開催期間:2005年8月20日~10月16日
この展覧会は終了しました。

新日本画の世界を拓いた山口蓬春(1893~1971)は、東京美術学校日本画科を卒業後、伝統的な技法を基盤としつつ広く内外の芸術を吸収し、戦後は時代感覚を意識した「蓬春モダニズム」と形容される独自の世界を創り出しました。その制作の舞台となったのは、明るい陽光があふれる葉山御用邸近くの自宅兼アトリエでした。
北に山を背負い、庭は700坪、南下りの理想的なたたずまい、瀟洒な数奇屋造りの家と丹精をこめた日本庭園―夫妻の暮らしたその空間に彩りを添えたのは、夫妻が収集した茶道具でした。
春子夫人は宗流の茶人で、葉山の自宅ではお茶事を催していたようです。蒟醤(きんま)の菓子器や桃林宗陽の茶杓など、華奢で繊細な茶道具を好んでいたように思われます。また蓬春も夫人同伴で茶会に赴いたり、同世代の陶芸家との交流の中で茶碗や花入などのうつわを収集していきました。夫妻が愉しんだ茶道具からは夫妻の会話や暮らしぶりまでが伝わってくるようです。
本展では蓬春コレクションから季節の取り合わせとして、蓬春夫妻が催したお茶事をイメージして、掛物・釜・水指・茶入・茶碗・菓子器を陳列し、併せて季節の日本画や素描を展示いたします。本展を通じて蓬春夫妻が大切にしていた「和敬清寂」の境地を偲んでいただければ幸いです。
夏季展
器のある静物画展 〜蓬春の愛蔵した器を中心に〜
開催期間:2005年6月3日~7月31日
この展覧会は終了しました。

このたび、山口蓬春記念館では夏季展「器のある静物画展~蓬春の愛蔵した器を中心に~」を開催いたします。日本画家・山口蓬春はその生涯において風景・花鳥・静物と様々な主題に取り組みながら新しい日本画を目指しましたが、戦後になり神奈川県葉山町に移り住んでからは、主に静物・風景へと主題が移ってゆきます。そしてモチーフには盛んに陶磁器が登場し、それらは蓬春自らがコレクションしたものでありました。また、戦前から東洋の各地を訪れ現地を取材した作品を制作していた蓬春ですが、昭和31(1956)年の「雪舟等楊逝世450周年記念式典」に日本代表として中国を訪問してからは、唐三彩をはじめとする多種多様な海外の陶磁器がモチーフとして登場するようになります。蓬春は、海外の文化について「兎に角積極性に富んだ作家達は、新たに移入された海外文化に影響され、また感化され自覚を促され、その自覚に依って既成的な芸術様式に対して、新しい様式をつくる努力をするようになる。」と著書『新日本画の技法』(美術出版社、昭和26年発行)の中で述べていますが、海外の陶磁器に親しむようになったのは海外の珍しい文化に感動し、自身の作品の中に取り入れたいという蓬春の気持ちの表れではないでしょうか。
今回の展示では、器のある静物画と蓬春がコレクションした器などを併せて展示いたします。蓬春も愛した器の数々を是非ご堪能ください。
春季展
自然へのまなざしー蓬春が描いた生き物たちー
開催期間:2005年4月1日~5月29日
この展覧会は終了しました。

古来より、人間にとって身近な存在であった動物や植物は、芸術作品の様々なモチーフとして描かれてきました。特に、東洋では、それらは独立した画題として発展し、一般的には、草花と鳥を主題とした「花鳥画」、草花のみの「花卉(かき)画」、鳥の代わりに昆虫を描く
「草虫図」のほか、犬・猫・兎・鹿などの獣に花木を配するものも含まれていきました。そこには、人間を自然の一部としてとらえ、親愛の情とともに自然を賛美する東洋独自のまなざしが反映されているといえるでしょう。そして蓬春もまた、そのまなざしを受け継ぎ、自然と真摯に向き合いながら、生き物たちの姿を通じて森羅万象を描いていった画家だということができます。
昭和9(1934)年、野鳥をあるがままの姿で大切にしようという考え方が乏しかった当時の風潮を深く憂えた中西悟堂(歌人・詩人・鳥類研究家)を創始者として「日本野鳥の会」が発足しました。蓬春は、「鳥の科学と芸術の融合」を目指したこの会の発起人に名を連ねており、形式的に描かれることが多かった従来の「花鳥画」に対して、鳥類学者も認めるほどの正確な生態に基づいた鳥を描くことにつとめました。また、葉山に転居してからは、海と山に囲まれ風光明媚な葉山の豊な自然を題材に、「花鳥画」や魚や貝などを描いた「静物画」などに取り組んでいきました。残された多くの素描からは、自然の形態を学び取りながら、「新日本画の創造」を目指して邁進し続けた蓬春のたゆみない探究心を読み取ることができます。常に身近なものに目を向け、それらを深い愛着とともに繰り返し描いた蓬春の作品には、対象に対する深い理解と優しいまなざしを感じることができるのです。
本展では、蓬春が描いた生き物たちの姿と収集したコレクションの数々を通じて、蓬春の自然へむけられたまなざしを辿っていきます。
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