山口蓬春没後50年・記念館開館30周年記念特別展 -第Ⅰ期 出発-
北海道の大自然が生んだ山口蓬春・新日本画の魅力
2021年2月6日(土)~4月4日(日)
この展覧会は終了しました。
令和3年(2021)5月31日は、日本画家・山口蓬春の没後50年の節目であるとともに、同年10月には、山口蓬春記念館が開館してから30周年となります。当館では、この記念すべき年を迎えるにあたり、「山口蓬春没後50年・記念館開館30周年記念特別展」を3回にわたり開催し、蓬春の生涯と画業の変遷を新たな研究成果に基づいて展観します。
日本画家・山口蓬春(1893-1971)は、明治26年(1893)に北海道松前郡にて生を受け、津軽海峡を臨む松前城二の丸跡にあった生家で育ちます。その後、父の仕事の都合で上京しましたが、感受性を育むこの時期に豊かな大自然と新しいものに挑戦する人々の姿などを間近に感じられる北海道で過ごした影響は画業を通じて生涯にわたり続いていったといえます。
昭和6年(1931)、北海道出身の在京画家を中心に北海道美術家連盟が結成されると、蓬春は会員として参加します。山形県に疎開していた昭和21年(1946)には、北海道で創刊された雑誌『北方風物』に表紙絵のほか北海道での思い出を綴った「鳥」を寄稿します。そして昭和30年(1955)、日本美術展覧会北海道展開催のため、約50年ぶりに故郷を訪れた蓬春は、この時の印象をもとに《まり藻と花》を制作しました。また、昭和38年(1963)に『朝日新聞夕刊』に掲載された「新・人国記」北海道編では、挿絵43枚を蓬春が担当しています。
蓬春は、北海道についてしばしば言及する機会もあり、自らの故郷を強く意識していたことが窺えます。常に新しさを求める「求新」の人と例えられた蓬春の新日本画創造にかけた不屈の精神とその原動力は、"道産子"としての自負に由来しているようにもみえます。
本展では、人間・山口蓬春のアイデンティティとして北海道を捉え、画業の変遷を辿りながら蓬春が追い求めた新日本画の魅力を探ります。