山口蓬春記念館 平成24年度 夏季展
山口蓬春と水禽図
-収蔵作品にみる水辺の風情-
2012年6月1日(金)~8月5日(日)
この展覧会は終了しました。
花鳥画の起源は、古代中国にもとめられ、六朝時代(3-6世紀)から唐時代(7世紀)にかけて一つのジャンルとして成立したとされます。北宋時代(10-12世紀)になると体系化され一旦の完成期を迎え、画題や起用されるモティーフも定型化されます。そのような中で水禽(水辺に生息する鳥)をテーマにした作品は、古くは後漢時代(1-3世紀)にすでに見られ、やがて水鳥と蓮を中心に描いた蓮池水禽図が、五代十国時代(10世紀)以降に盛んに描かれるようになります。当時の人々がどのような思いで描いていたのかは推測の域を出ませんが、周時代(紀元前11-8世紀)に作られたとされる中国最古の詩篇である『詩経』には、鳥や魚がめでたきものとして用いられています。また蓮は中国において結婚や子孫繁栄など吉祥のシンボルとされているほか、仏教の中では泥の中に咲いてその泥に染まらない清らかな花として菩薩の聖性を象徴する花とされています。
一方日本では、鎌倉時代後期(14世紀)より禅宗とともに多くの中国絵画も伝わります。はじめ禅僧が余技的に描いていたものが、やがて専門的に制作されるようになり、桃山時代には濃彩による金碧障屛画も誕生します。江戸時代(17世紀)になると琳派などが生まれ、各時代を通じて様々な発展を遂げてゆきます。 山口蓬春記念館には、日本画家・山口蓬春(1893-1971)の作品のほか、蓬春が蒐集した古今東西の美術品が収蔵されていますが、その中には中国・日本の花鳥画も含まれ、水禽を題材にした作品も見受けられます。また、蓬春による模写も多数あり、研鑽の跡が偲ばれます。
本展ではそれらの作品を取り上げ、太古から現代まで人々を魅了し続けた鳥たちの水辺の風情をご覧頂きたいと思います。