山口蓬春記念館 平成23年度 夏季展
素描と下図 -山口蓬春の制作過程-
2011年6月25日(土) ~ 9月4日(日)
この展覧会は終了しました。
山口蓬春記念館では、日本画家・山口蓬春(1893-1971)の日本画作品を中心に研鑽の偲ばれる素描や下図なども多数所蔵しています。日本画の一般的な制作過程としては、現場において直接に対象物を見ながら本制作を行うことはほとんどなく、画室にて素描をもとに下図を作成してから本制作を行うという行程がみられます。そのことから素描や下図は構想をまとめ上げる純粋な段階であり、蓬春も素描などを人に見せることは「丁度舞台人が楽屋の中を見られるようなもの」(*1)と述べています。また制作の姿勢について蓬春は視覚で捉えたありのままを描くだけではなく、「対象物に対する自己感動が併写されて、その人の個性に根ざした独自の写生と言われるものが出来るようにならなければならぬ。」(*2)と提言しています。当館では蓬春が愛蔵しモティーフとしても取り上げられた古陶磁の一部を所蔵していますが、実物に比べてかなり膨張して描かれている場合があり、それも自己感動の一つの表れと捉えることができるかもしれません。
このように蓬春は日本画という伝統的な分野に身を置きながら、常に新しい表現を模索し独自の創作方法を確立していったことが窺えます。本展では、蓬春の素描や下図、モティーフとなった陶磁器などを展示し、蓬春の創作過程を探ってゆきます。
*1...『現代名家自撰素描集第一輯 山口蓬春自撰植物編』 芸艸社 1940年
*2...『新日本画の技法』 美術出版社 1951年